小さな茎の再利用から、大きな環境保全へ。~植物の茎から生まれるポット「STEMN」~
- 岩田紫苑
- 6 日前
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こんにちは。ライター&広報PRの岩田紫苑です。今回は3年前に始動した「STEMN」プロジェクトについて、お伝えします。
花農家、花市場、花屋、結婚式場、葬儀会社などなど…毎日当たり前のように捨てられる植物の茎。これらは大量に廃棄されていて、その現状を打破するために生まれたプロジェクトが「STEMN(ステムン)」です。2022年6月には、第一弾として廃棄される植物の茎と古新聞だけで作られた、環境に優しい植物用ポットを開発しました。本日は、花き園芸業界からSDGsに貢献する革新的な取り組みをご紹介します。

1.「STEMN」プロジェクトについて
花市場や花屋さん、葬儀会社など、花を扱う現場では、毎日大量の茎が捨てられています。花束やアレンジメント制作、冠婚葬祭の飾り付けで花を必要な長さに切るためです。SDGsが重要視される昨今、この植物の茎を単に廃棄せず、新しい資源として活用できないか。そんな発想から、株式会社JOUROと株式会社山櫻が共同開発で取り組んでいるのが「STEMN(ステムン)」プロジェクトです。第一弾として、循環型植物用ポットを販売中。この植物用ポットの原材料は、廃棄されるはずだった植物の茎と、一度世の中に出回った新聞古紙です。

2.廃棄される茎の量はどれくらい?
実際にどれほどの茎が捨てられているのか、ある花屋さんにご協力いただき、1店舗あたりの廃棄量を調査しました。
その結果は45リットルのごみ袋3袋分。1日あたり135リットルもの葉と茎が廃棄されているのです。花市場は毎週月・水・金曜日にせりが開催されるため、花屋さんが週3回仕入れに行くと仮定すると、1週間で405リットル(135×3)が捨てられます。これを4週間、12か月と計算していくと、想像を超える量が廃棄されていることがわかりますね…
皆さんの店舗でも、どれほどの葉や茎が捨てられているか、ぜひ確認してみてください。
3.循環型植物用ポットの特徴は?
新たな地球資源を使わない製造過程
循環型植物用ポットの原料は2つだけです。茎(葉を含む)と新聞古紙から作られています。一般廃棄物になる前の回収した茎を乾燥させて粉砕し、粉末状にします。水で溶かした新聞古紙に、粉末の茎を練り込みます。それらを金型で形作り、乾かしてポットを完成させます。
新たな地球資源をまったく使用しない製造方法が特徴の1つです。
土に埋めることで自然に還る
園芸用ポットとして使用した後、植え替えの際はポットごと土に埋めることができます。土中の微生物が半年から1年かけてポットを分解してくれるからです。花を楽しんだ後のアレンジメント容器は、使い道に困ったり、倉庫で眠ったりしてごみとして捨てられることが多いものです。しかし、このような設計なら、植木鉢として活用した後、土に還すことでごみを出しませんよね!

4.ポットの使い方は?
生花のアレンジメント、ドライフラワーのアレンジメント、多肉植物の寄せ植えなど様々な用途に適しています。容器の色は、花や多肉植物の美しさを引き立てるシンプルな色合いです。また、表面の凹凸など、原料である新聞古紙の素材感も表現したデザインになっています。
この植物用ポット「STEMN(ステムン)」は、岡山県の赤磐市立高陽中学校の生徒たちにも使用されました。1年生を対象とした「SDGsについて学ぶ特別授業」の中で、環境資源の再生について学ぶ事例としてSTEMNが取り上げられたのです。


教育機関の教材として活用できる最大の理由は、STEMNが循環型経済(サーキュラーエコノミー)を実現する商品だから。従来の経済システムは、限られた地球資源(石炭や石油)を製品の原料として使用し、大量生産した後に使い終わると大量廃棄するという流れでした。これは一本の線のような経済システムであり、直線型(リニア)経済と呼ばれてきました。
それに対してSTEMNは、循環型(サーキュラー)経済を実現するための商品です。「このSTEMNを使うことで資源や環境が守られている」と子どもたちに伝えることができます。具体的な説明をする際には、貢献している3つの開発目標に触れることで、子どもたちの理解がより深まると考えています。
特別授業では、身近な存在である花の茎が題材だったこともあり、生徒たちの理解が深まり、満足度の高い授業になったとのことです。

5.SDGsへの貢献点
このプロジェクトでは、花き園芸業界のSDGs達成を目指しています。このポットの取り扱いによって、具体的に17の目標のどれに該当し、どのような貢献ができるのでしょうか。

目標12 【つくる責任つかう責任】
→ターゲット12.2「天然資源の持続的な管理と利用」
ポットの原料は廃棄される茎と新聞古紙です。新たな資源を一切使用しない点が特徴です。
→ターゲット12.5「廃棄物の発生の大幅な削減」
不要になった場合も、土に埋めると微生物がポットを分解します。ごみを出さない設計になっています。
目標14【海の豊かさを守ろう】
→ターゲット14.1「海洋汚染を減らす」
化石燃料由来の素材を使っていないため、海洋マイクロプラスチック問題の軽減につながります。
目標15【陸の豊かさを守ろう】
→ターゲット15.2「森林減少の阻止と劣化した森林の修復」
原料の新聞古紙は、一度世の中に出回り、その後回収されたものです。紙資源でありながら木を伐採していないため、森林保全に貢献できます。
まとめ:花の茎から始まる持続可能な未来へ
「STEMN(ステムン)」プロジェクトは、花き園芸業界から生まれた画期的なSDGs実践の取り組みです。毎日大量に廃棄される花の茎を新たな資源として活用し、循環型植物用ポットを開発しました。
このポットは新たな地球資源を使わず、使用後は土に還るため環境負荷がありません。生花アレンジメントや多肉植物の寄せ植えだけでなく、教育現場でも循環型経済の教材として活用されています。
花き園芸業界に関わる皆さま、持続可能な未来への一歩として、ぜひSTEMNの導入をご検討ください。小さな茎の再利用から、大きな環境保全へ。STEMNと共に循環型社会を実現しましょう!
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